「自宅で採れたての野菜を食べてみたいけれど、畑なんてないし…」
そんなふうに諦めてしまっていませんか?
実は、スーパーで買ってきた培養土の袋をそのまま鉢代わりにする「袋栽培」なら、ベランダや小さなお庭でも手軽に家庭菜園を始められます。
特にピーマンは、ひと株からたくさん収穫できる人気の野菜ですが、袋栽培で育てるには少しコツがいります。
プランターや地植えとは違い、土の量が限られているため、風で倒れやすかったり、水切れを起こしやすかったりするからです。
「せっかく育てたのに、台風で倒れてしまった」「実がなってもすぐに腐ってしまう」といった失敗を防ぐには、しっかりとした「支柱の立て方」と、長く収穫するための「管理のコツ」を知っておくことが大切です。
この記事では、初めての方でも安心して取り組めるよう、袋の準備から秋まで収穫を楽しむための秘訣を、専門的な視点も交えながら分かりやすく解説していきます。
正しい知識を身につけて、今年の夏は美味しいピーマンをたくさん収穫しましょう。
- 袋栽培に適した排水対策と土の準備方法が分かる
- 強風でも倒れない行灯仕立ての支柱テクニックが分かる
- 病気を防ぎ収穫量を増やす3本仕立ての手順が分かる
- 水やりと追肥のタイミングで長く収穫するコツが分かる
ピーマンの袋栽培は支柱の立て方が重要

- 排水穴は底と側面に必ず開けよう
- ピーマンの袋栽培で土を整える手順
- 植え付け時の仮支柱は8の字結びで
- 失敗しない支柱の立て方は行灯式
- 転倒防止に役立つ固定テクニック
ピーマンの袋栽培を成功させるカギは、苗を植える前の「準備」にあります。
特に、根が呼吸できる環境作りと、風に負けない構造を作ることが非常に重要だと言われています。ここでは、袋のセッティングから安定した支柱の立て方まで、基礎をしっかり固めていきましょう。
排水穴は底と側面に必ず開けよう

市販の野菜用培養土の袋は、通常水を通さない丈夫なポリエチレン素材などで作られているため、そのままでは水が抜けません。
植物の根も私たちと同じように酸素を必要として呼吸しています。もし袋の中に水が溜まったままになると、酸素不足に陥り、根腐れを起こして枯れてしまう原因になるとされています。
そこで重要になるのが、排水穴の開け方です。一般的に、袋の底面だけでなく、側面の下部にも穴を開けることが推奨されています。底面だけだと、袋自体の重みで穴が地面に押し付けられ、塞がってしまうことがあるからです。
ドライバーや目打ちを使い、底面に6〜15箇所程度、さらに底から3〜5cmの高さの側面にもぐるりと一周、10〜20箇所ほど穴を開けておくと、排水性が格段に良くなるでしょう。
底面だけでなく、側面の下部にも穴を開けて空気の通り道と排水路を確保します。
側面に穴を開けることで、底にわずかな保水層ができ、急激な乾燥を防ぐ効果も期待できます。
コンクリート床の熱から根を守るため、スノコやレンガの上に置いて通気性を確保しましょう。
ピーマンの袋栽培で土を整える手順

袋を開けてすぐに苗を植えるのではなく、まずは土の量を調整し、栽培しやすい形に整えることが大切です。
袋の上部をハサミで切り開いたら、口を外側に2〜3回くるくると折り返して、土の表面から袋の縁までに数センチの「ウォータースペース」を作ります。
このスペースを確保しておかないと、水やりのたびに泥水が溢れ出し、ベランダを汚してしまうだけでなく、必要な土まで流出してしまう恐れがあります。
また、袋の折り返し部分は「リブ(補強材)」のような役割を果たし、袋の口がふにゃふにゃになるのを防いでくれます。
最後に、袋の底マチをしっかりと広げ、地面に数回トントンと打ち付けて底を平らに均すと、重心が下がってどっしりと安定し、転倒リスクを減らすことができると言われています。
植え付け時の仮支柱は8の字結びで

苗を植え付けた直後は、まだ根が土に張っていないため、非常に不安定な状態です。
わずかな風で揺すられるだけでも、伸び始めたばかりの繊細な根が切れてしまい、その後の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、植え付けと同時に「仮支柱」を立てて、苗を固定することが推奨されています。
30〜50cmほどの細い支柱や割り箸を用意し、根鉢(根と土の塊)を傷つけないように斜めに優しく差し込みます。
そして、茎と支柱を麻紐などで結ぶのですが、この時、茎を締め付けないよう「8の字」に交差させて結ぶのが基本テクニックです。
8の字結びにすることで、茎と支柱の間にクッションができ、風で揺れた際の摩擦による傷や、茎が太くなった時の食い込みを防ぐ効果が期待できます。
失敗しない支柱の立て方は行灯式

ピーマンが順調に成長し、草丈が60cmを超える頃や一番花が咲く頃には、仮支柱から本格的な本支柱への切り替えが必要です。
特に袋栽培では、土台が軽いため強風に弱く、1本の支柱だけでは支えきれないことが多いです。
そこでおすすめなのが、「行灯(あんどん)仕立て」と呼ばれる、複数の支柱をリングで連結する方法です。
この方法は、袋の四隅(円周上)に3〜4本の長い支柱を底まで深く差し込み、上部と中間をリングや紐で繋いで固定します。
こうすることで、立体的なカゴ状の構造(トラス構造に近い安定感)が生まれ、どの方向からの風にも耐えやすくなると言われています。
市販の「野菜用リング支柱セット」などを利用すれば、初心者の方でも簡単に頑丈な支柱を組むことができるでしょう。
3〜4本の支柱が協力して支えるため、単独の支柱よりも格段に風に強くなります。
立体的な構造になるため、枝を四方に広げて誘引しやすく、日当たりも確保できます。
支柱同士の交差部分は、結束バンドなどでしっかり固定するとさらに強度が上がります。
転倒防止に役立つ固定テクニック

袋栽培には「移動が楽」というメリットがある反面、「足元が軽くて倒れやすい」という最大の弱点があります。
特に台風シーズンなどは、強風で袋ごと飛ばされてしまうリスクもゼロではありません。そこで、支柱を立てるだけでなく、袋と支柱を一体化させる工夫が有効です。
例えば、支柱を土に刺す際に、袋の縁を巻き込んでクリップで留めたり、紐で外側から縛り上げたりすることで、袋の土の重さをアンカー(重石)として利用できます。
もし庭土の上に置くのであれば、支柱を袋の底から突き破って地面に深く(30cm以上)打ち込む「ペグダウン」を行うと、露地栽培並みの安定感が得られるでしょう。
ベランダの場合は、袋の周りをレンガやブロックで囲ったり、袋ごとコンテナボックスに入れたりして、物理的に転倒を防ぐ対策も検討してみてください。
初心者でもピーマンを長く収穫するコツ
- 一番花は摘み取って株を優先させる
- 3本仕立てとわき芽かきのポイント
- 水やりと追肥で肥料切れを防ぐ方法
- 夏の枝透かし剪定で日当たり改善
- 尻腐れ病を防ぐカルシウム対策
- 秋まで長く収穫するコツのまとめ
頑丈な支柱が完成したら、次はいよいよ日々の栽培管理です。
ピーマンはナス科の野菜の中でも比較的育てやすく、適切な手入れをすれば秋まで長く収穫を楽しめます。
ここでは、株を疲れさせずに収穫量を最大化するための、プロの視点を取り入れた具体的なお世話のポイントを解説します。
一番花は摘み取って株を優先させる

最初に咲く「一番花」を見つけると、嬉しくてついそのまま実らせたくなりますが、実はこれを摘み取ることが、長く多収穫を目指すための第一歩だと言われています。
植物にとって開花や結実は、とても多くのエネルギーを使う一大イベントです。
まだ株が十分に育っていない初期段階で実をつけてしまうと、栄養がそちらに奪われ、茎や葉を大きくするためのエネルギーが不足してしまいます。
その結果、株全体が小さくまとまってしまい(「こじれる」状態)、その後の収穫量が激減してしまうことがあります。
専門家の間では、一番花、株の勢いが弱い場合は二番花までも、蕾か開花直後に摘み取ることで、まずは根と茎葉の「体作り」に専念させるのが定石とされています。
少しもったいない気もしますが、将来の豊作のための投資と考えて、早めに摘み取りましょう。
3本仕立てとわき芽かきのポイント

ピーマンは放任すると枝が次々と分かれて混み合い、日当たりや風通しが悪くなってしまいます。
そこで推奨されるのが、主枝と勢いの良い側枝2本を選んで育てる「3本仕立て」という方法です。
具体的には、一番花がついた枝(主枝)と、そのすぐ下の節から出ている元気なわき芽を2本選び、合計3本をメインの枝としてY字型に広げていきます。
そして、それよりも下の節から出てくる「わき芽」は、すべて小さいうちに取り除きます。
下の方のわき芽は、地面に近く泥はねによる病気のリスクが高い上、上部への栄養供給を阻害する可能性があるからです。
こまめに「芽かき」を行うことで、必要な枝に栄養を集中させ、病気に強い健全な株を維持できるでしょう。
| 仕立て方 | 特徴とメリット |
|---|---|
| 3本仕立て | 日当たりと風通しが良く、湿気を嫌う袋栽培に最適。管理もしやすい。 |
| 4本仕立て | 枝数は増えるが、根域が限られる袋栽培では負担が大きく、管理が難しくなる場合がある。 |
水やりと追肥で肥料切れを防ぐ方法

ピーマンは「肥料食い」と呼ばれるほど多くの栄養を必要とし、同時に水切れにも非常に弱い野菜です。袋栽培は畑に比べて土の量が圧倒的に少ないため、土壌が乾燥しやすく、肥料切れも早いサイクルで訪れます。そのため、露地栽培よりも精密な管理が求められます。
水やりは、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るまでたっぷりと与えるのが基本です。特に真夏は、朝の水やりだけでは足りず、夕方にも水やりが必要になることが多いです。
肥料に関しては、一番果の収穫が始まる頃から2週間に1回程度のペースで化成肥料などを追肥し、スタミナ切れを防ぎます。
樹勢が落ちていると感じたら、即効性のある液体肥料を水やり代わりに与えるのも効果的だとされています。
夏の枝透かし剪定で日当たり改善

梅雨明けから夏にかけて成長スピードが上がると、枝葉が茂りすぎてジャングルのような過密状態になることがあります。
こうなると、株の内側に日が当たらず光合成効率が落ちるだけでなく、蒸れて病害虫の温床になりかねません。
これを防ぐために行うのが「枝透かし剪定」です。
剪定の対象となるのは、株の内側に向かって伸びる「内向枝(懐枝)」、日光が当たらず細くて弱い「無効枝」、そして実の重みで垂れ下がった「下垂枝」などです。
これらを付け根から間引き、上から見た時に株の中心がドーナツ状に空いている状態を目指します。
風の通り道を作ることで、株全体がリフレッシュし、秋まで元気に育つ環境が整うでしょう。
尻腐れ病を防ぐカルシウム対策

家庭菜園でよくあるトラブルの一つに、実のお尻が黒褐色に変色して腐ってしまう「尻腐れ病」があります。
名前に「病」とついていますが、これは病原菌によるものではなく、主にカルシウム不足によって起こる生理障害だと言われています。
カルシウムは植物の体内で移動しにくい栄養素で、水と一緒に吸い上げられます。そのため、土の中にカルシウムがあっても、水不足で根が吸えなければ、実の先端まで届かずに細胞が壊死してしまうのです。
つまり、「尻腐れ=水不足」であることが多いのです。
対策としては、土を乾燥させないことが最優先ですが、苦土石灰などを追肥したり、市販の「カルシウム入り葉面散布剤」を葉や実に直接スプレーしたりして、応急処置を行うのも有効な手段とされています。
- 毎日水やりしているのに尻腐れになりますか?
-
はい、水の量だけでなく、一度の水切れでもダメージを受けることがあります。特に夏場は朝夕の水やりや、水分計(サスティーなど)を使って土の中の乾き具合をチェックするのがおすすめです。
- アブラムシがついたらどうすればいいですか?
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見つけ次第、粘着テープで取るか、食品成分由来の薬剤などで早めに対処しましょう。アブラムシは光るものを嫌うため、株元にアルミホイルを敷くと予防効果があると言われています。
秋まで長く収穫するコツのまとめ
ピーマンの袋栽培で、秋まで長く収穫を楽しむためのポイントをまとめました。
- 排水性を確保するため袋の底と側面下部に必ず穴を開ける
- 強風対策として安定性の高い行灯仕立ての支柱を採用する
- 植え付け直後は仮支柱を立てて繊細な苗を保護する
- 一番花は早めに摘み取り株の骨格作りを優先させる
- 3本仕立てで日当たりと風通しを確保し病気を防ぐ
- 内側に向かう枝や弱い枝は透かし剪定で整理する
- 水切れは尻腐れ病の主原因となるため土の乾燥を防ぐ
- 肥料切れを防ぐために2週間に1回は定期的に追肥を行う
- 夏場は朝夕の水やりを行い水分ストレスを回避する
- 実は若いうち(中型なら30〜40g)に収穫して株の負担を減らす
- 株元にアルミホイルを敷いて地温上昇抑制と害虫忌避を行う
- 支柱と袋を結束バンド等で固定し構造を強化する
- 秋になり実の肥大が遅くなったら完熟果(赤ピーマン)も楽しむ
- 日々の観察を欠かさず病害虫を早期発見・対処する

